お弁当

　この春から息子が幼稚園に通い始めるため、毎朝妻がお弁当を作る練習をしています。ついでに、本当についでに私の分まで作ってくれるので、新しい職場で働くようになってからというもの、愛妻弁当持参の毎日です。

　正直照れくさいので、当初は自分の仕事スペース（ついたてに覆われた狭～いところ）で、独りでひっそりと食べていたのですが、ここの職場はご利用者と一緒に食事を摂っているため、（いつまでも付き合いの悪い態度は良くないだろう。）と、ある時期から皆さんと一緒に食べるようになりました。

　予想通り、「奥さんの愛妻弁当、うらやましい。」だとか、「幸せなご主人―。」などと言われ、ダイレックスで買ってきたカップラーメンとおにぎりを食べている所長（奥さんごめんなさい。他意はありませんので―。）に申し訳ないと思いながら、いつも詰め込むように急いで食べています。

　職場での反響を妻に話して聞かせると、彼女もまんざらでもない様子。別に何が何でも作って欲しいわけでもないのに、早起きして毎回趣向を凝らした弁当をこしらえるわけですよ、これが。（いっそお弁当屋さんにでもなればいいのに―。）と思ってしまうほどです。

　今日はご存じ“バレンタインデー”、実のところ朝から嫌な予感がしていたんです。昼食時に持参したお弁当の蓋を開けようとすると、いつものように皆の注目が集まります。

　・・・有りましたよ。くっつけて“ハート形を模った玉子焼き”が。しかも２個も！！当然のように「わあ～！！」と歓声が上がり、居た堪れなくなった私は、すぐに蓋をして現実から目を背けようとしますが、時すでに遅し。

（調子に乗りやがって、嫁。夫がどんなに恥ずかしい思いをしていることか・・・（握拳））

　バレンタインバージョンのお弁当は、昼食時の弾む会話と和やかな雰囲気作りに、一役も二役も貢献したのでした。
　
　また独りでこっそりと食べることになるかもしれません。